はにまる日記

【書評】野村克也・著「なにもできない夫が、妻を亡くしたら」を読む

【書評】野村克也・著「なにもできない夫が、妻を亡くしたら」を読む

 

こんにちは。

はにまる(@yamakatsuhogo)です。

お読みいただいてありがとうございます。

「なにもできない夫が、妻を亡くしたら」

 

11月の末に購入した本、ノムさんの「なにもできない夫が、妻を亡くしたら」。

クリスマスに読み返してみて、いろいろ思うことがありましたので、ちょっと今更ですけど記事にしていきたいと思います。

星の数ほどあるノムさん本。

私も、やまかつ民として、結構読んできたつもりですけど~。

最近の野球論ご著書は正直言って、おじいちゃんの繰り言状態でおんなじ話題のループでしかなく、(ちょいちょい今岡誠さんの悪口ブレンドしてるくらいで)。

ほとんど手に取ることもなかったのですが。

ちょうど、ダイジェスト的な記事が、twitterでバズっていたこともあり、興味本位でAmazonでポチってみたました。

(この記事も抄録ではありますが、とても読み応えあります)

サッチーを亡くしてからのノムさんのヨレヨレぶりを見れば、ご夫婦愛の強さが伝わりますが…↓

いわゆるサッチーブーム(ミッチー・サッチー騒動)を巻き起こし、ご意見番キャラとして一世を風靡した”猛妻”サッチー。

ド派手なファッションでテレビに出れば、他人をズバズバこき下ろす。

悪評紛々の極悪マダムキャラとして、衆院選にまで立候補しちゃったサッチー。

(落選、のちにこの時のコロンビア大卒業という経歴が詐称ではないかと騒ぎになります)

お金に汚く、わがままで、でしゃばりで…と。

サッチーへの悪口合戦は、多士参戦で話題に事欠かず。

テレビのワイドショーで延々と放送されたサッチー・バッシングに、日本中が熱狂していた時代でした。

(wikipediaには、騒動のウラに読売グループありの陰謀説も掲載されていますが、まさにマスメディアによるいじめの構図ですね)

が、ご子息であるカツノリさんの礼儀正しさや、優しい人となりを見聞きするにつけ。

サッチーさんが言われているような”悪女”であれば、こんな立派な息子さんに育たないだろうなと思うところもあり。

みんなして散々サッチーの悪口を言い合ったあとで、「ノムさんは、なんであんな”悪女”と別れないのか」と他人が訝しがってたわけですが…。

野村ご夫妻は、40年以上もの長い時間を、”婦唱夫随”で添い遂げられたわけでありまして。

結局、似たもの夫婦なのだろう…と曖昧な憶測のもと、わたしはサッチーについて深く考えることなく(まぁ多くの人がそうでしょうけど)過ごしてきたわけです。

外では監督、家では支配下選手

そして、手に取ったこちらの「なにもできない夫が、妻を亡くしたら (PHP新書)」という、ある意味では”ノムさんによるサッチー暴露本”。

本のタイトルこそ「終活本」みたいですが…。

ノムさんご自身の人生に対してのボヤキ、そしてサッチーへの追慕の気持ちを赤裸々に語っておられて、これまでの野村人生論愛読者としては正直…

はにとらちゃん
はにとらちゃん
度肝を抜かれたよね

例えるなら、落合ノビー信彦が「俺は劣等感のかたまり」ってタイトルの本出すくらいの衝撃でした。

野球本では、あんなに人生論にからめて「自分の頭で考えろ」と連呼していたノムさん。

阪神の監督時代は、天敵の今岡誠さんのことを「何も考えてない、感性だけで野球やっとる」とブレイク前のぽやーっとしたまこっちゃんをやり玉に挙げてましたけど。

そのノムさん。

家庭内では、完全にサッチーの「指示待ち人間」だったと認めています。

お金、ファッション、講演会やテレビ出演の取捨やスケジュール管理に至るまで。

引っ込み思案な(すぐひがみっぽくて劣等感いっぱいの)ノムさんに代って、社交的なサッチーがどんどん人脈を広げ、ノムさんの仕事につなげていく。

人前で話すのが苦手なノムさん(でも寂しがり屋だからおしゃべり好き)に。

サッチーさんは殺人的なスケジュール組みで、年間何百本という講演スケジュールを入れる鬼の千本ノックで、少しずつ講演のコツを掴ませます。

出来ないこと、苦手なことが少しずつできるようになっていくことで。

少しずつ成果を実感しはじめたノムさん。

そこから得意の観察眼で聴衆のニーズを掴むようになり、トークの強弱や内容に創意工夫を重ねていくようになります。

そのうち、一度は球界を追われた”野球浪人”にすぎない一解説者・ノムさんの講演活動は瞬く間に大人気となり。

その緻密な野球理論に惚れ込んだヤクルト球団社長からの要請を受けて、何の縁もなかったヤクルトの監督に就任。

選手時代だけでなく、指導者としての第二の人生も大成功を収められたわけです。

あれ、このストーリーって、なんだかノムさんが見いだして活躍させてきた選手達の話みたいじゃないですか??

その選手の取り柄を伸ばして、居場所を作ってやり、何が足りないかを自覚させ、自分で努力させてつかみ取らせる。

この本はまさに、サッチーさんによる”ノムさんの育成マニュアル”を赤裸々に暴露したものだと言えるでしょう。

プロ野球選手の夫を成功させるには??

大昔の話で恐縮ですが。

わたしの大好きなすっとこどっこいマルチプレイヤーのほしぴーこと星野おさむさん(1989 – 2001まで阪神在籍、キャラ的には坂克彦さんにかぶります)の奥さんが、一般人としてサッチーの講演会に行き、「夫を成功させるには?」という質問をしたというエピソードがあったように記憶しています。(違ってたらごめんなさい)

その時のサッチーの回答がどういうものであったかは伝わっていないのが残念ですが…。

サッチーさんが夫を成功させた妻であることは間違いない事実であるわけで。

はいそれね。

いろいろ話題を提供しつつ、息子さん2人をイートン校に入れた紗栄子さんだの、ダンナがブレイクする前から(引退した後のことまで視野に入れて)10年前から先を読んで高級ネイルサロンを経営してた今岡梨恵さん(マコっちゃんの奥さんね)みたいな”プロ妻”界の逸材は、なかなか出てきません。

この紗栄子さん、今岡梨恵さんお二人に共通しているのは、綺麗な女性タレントであることは勿論ですけど、とにかく自分の仕事を手放さず、ママタレとしての商品価値を最大化する努力を惜しまないこと、(子供のために先を読んで)最善手で行動するバイタリティーが有ることですね。

もう平成も終わろうとしているのに。

のんきなプロ野球選手の妻たちは、相変わらずアスリートフードマイスター資格とって。

Instagramに(きれいな器によく映えた)、高タンパク低脂肪なお料理アップしてますけど~。

当のダンナたちは、遠征先の焼き肉屋さんで、ジュージュー高価な肉焼きながら、ストーリー動画upしたりしてるわけでして。

5年たったら戦力外のダンナさんのために、一生懸命食べ応えのあるサラダ作ってる…そんな、けなげなプロ野球妻の皆さんには大変申し訳ないんですが…

遠征先など、ノムさんと遠く離れているときの電話の挨拶が「元気にしてるの!美味しいもの食べてる?!」だったというサッチーさん。

大食漢で美味しいもの好きなノムさんとは、(実は料理上手なのに)いつも外食やお手伝いさんまかせだったというエピソードからも、ただダンナに手間をかけるだけが愛情じゃない、スパっとした割り切りがあったことを思わせます。

サッチーさんは、ノムさんを放任しながら管理するという手綱の引き方の名手だったということなんでしょうね。

成功するしないは時の運かもしれませんが、ノムさんにとってサッチーがラッキースターであったことは間違いないのかもしれません。

叱る愛のオンナ

貧しい母子家庭で育ち、兵庫の日本海側から、誰にも頼ることなくたった一人で”南海のテスト生”として大阪に出てきたノムさん。

ノムさんの根っこの暗い部分を、福島の農家の娘から、自分のチカラだけで成り上がってきたサッチーは理解してくれていたからこそ、二人は長く添い遂げることが出来たのでしょう。

野球選手として成功をつかんだものの、引退後の安定を目当てに、逆”玉の輿”をもくろんだノムさんでしたが、(いかにも気の回らなそうな)ノムさんの性格のせいかはわかりませんが、最初の結婚生活はあっさり破綻。

別居生活、そして選手生活晩年のプレイング・マネジャーとしての責任と孤独に鬱々としていた時、運命的にサッチーと出会うノムさん。

カラっとして明るく、ユーモアに富んだサッチーの話術と、(後にすべて嘘だったと判る)華麗な経歴は、田舎育ちで性格もど地味なノムさんにとって、とても魅力的に映ったようです。

まさに月見草がラフレシアに出会ったようなものかも知れませんが…。

そして出会ったころの、まだ少年だった2人のお子さん(団さんケニーさん)を、女手一つで育ててきた女性、パワフルなサッチーのなかに、”父性”を見ていたとまで告白しているんですよね。

wikipediaのサッチーの経歴を読むだけで、彼女がどれだけ敵を作り、憎まれてきたかがうんざりするほど判りますが。

逆に言うと、ぜんぶ悪役(ヒール)を引き受けてくれる奥さんに、どれだけノムさんが助けられたかという話でもあります。

お金にならない仕事や、名前だけの名誉職、美味しい分け前を貰いにあらわれる連中を、サッチーが全部ブロックしてくれたから、ノムさんは(あの時代とは言え)田園調布に大きな庭付きの邸宅を構えることが出来たのでしょう。

身内にするには苦労の多い人ではあったでしょうけれど、そのあたりは功罪相償うといったところなのかも知れません。

嫌われたくない人に大人気な嫌われ役

今も昔も、ズケズケものを言うキャラクターは日本の芸能界では大人気です。

上沼恵美子さんしかり、マツコさんしかりです。

日常生活ではちょっとしたことに文句も言えず、うじうじしている多くの我々にとって、歯に衣着せないサッチーの怒号は、1990年代後半にテレビの世界でまずは熱狂的に受け入れられました。

↓Rap&サッチーの生声で喝を入れられる謎曲「Such a beautiful Lady」

うーん、ノムさん気分が味わえるサッチーのキッツい生ボイス…。

この調子で、(奥さんにガンガン叱咤激励されることで)ノムさんが成功してきたのであれば、まさに家庭内の「分業制」ですよね。

「俺は野球以外なにも出来ない」と自覚しているノムさんの陰で、子育てや資産管理、人脈作り、スケジュール管理、果てはファッションチェックまで。

嫌われ役、汚れ仕事は全部じぶんが引き受けてくれる奥さんなんて、現代でもなかなかいないと思いますが、サッチーはそれを”昭和の男性社会”のど真ん中でやってのけたわけで。

サッチーが”悪女”と呼ばれたのは、当時の世相を基準として”とんでもない女”だったせいなのは間違いないでしょう。

それゆえに、サッチーが暴走して㌧でもない騒動を引き起こすことが多々あっても、ノムさんにとって彼女はやはり、手放すことのできない理想のパートナーだったのではないでしょうか。

イエスマンの功罪

沙知代は、私が出ているテレビ番組をつぶさに見ていた。

私はそれほど話し上手ではないから、ボロが出たときは容赦がない。「何やっているの!」と叱られ、「ダメだったか?」と返すと「ダメよ、あんなの!」とキツい言葉が返ってくる。逆に、何も言われないときは合格点。大仰にほめられることはなかった。

週刊現代WEBより

日常から容赦なくビシバシ叱咤激励され。

本当にノムさんが落ち込んでいるときには「大丈夫よ、なんとかなるわよ!」と根拠なくはげましてくれるサッチー。

名声を得た人の周りには…

いつしかチヤホヤ太鼓持ちみたいなイエスマンしかいなくなり(山田勝彦さん聞いてる?)

叱ってくれる存在もなく、結果として道を見失うひとも多いですよね。

しかしノムさんは、家庭内に強烈なダメだしをしてくれる戦友にしてマネージャーである”サッチー”が居てくれたことで、なぜダメだったかを「自分で考えて」反省できたのでしょう。

え…ノムさんの語ってきた野球論とか人間教育とか、やっぱりサッチーなしでは存在してませんよねこれ…。

読めば読むほど、ノムさんがぽろぽろ野村本のネタばらしをしているような感覚になり、ちょっと怖くなってしまいました。

まるで一部分で、サッチーが「野村克也さんの人生のゴーストライター」であるかのような気持ちになる本でもあります。

”読書のすすめ”はサッチー直伝

さてさて。

野球選手も本を読まなきゃダメ!とサッチーに言われて、はじめて読書の習慣をもったというノムさん。

これも意外なエピソードでした。

ご自身はほとんど学歴らしいものを持たず、戦後の混乱期に身につけた英語力と驚異のコミュ力でのし上がっていったサッチーさんですが。

(ご自分の行いはさておき)叱咤激励の内容は、非常にユーモラスかつ正論一辺倒。

家庭内支配下選手のノムさんも、サッチーさんのおっしゃることには素直に従うことで、家庭内もうまく回っていたことを認めておられます。

阪神の監督をしていたころは、ぎらぎらベルサーチで決めてたノムさんでしたが、いわゆる野球選手的なダサさがなかったのも、サッチーのお見立てあってのことなのでしょう。

お金の管理もぜんぶ引き受けたサッチーは、最終的には数億円もの所得隠しによる脱税で有罪判決を受けるまでになってしまいましたが…。

サッチーは裁判では抵抗することなくすべてを認め、表舞台からあっさり姿を消してしまいます(その後ちょろっと復帰したりしてたようですが)

それでも。

同時代を生きたプロ野球の大選手たちの多くが、早死にしたり経済的に凋落していくなか。

ノムさんが80才を超えても評論活動を行い、田園調布に広い庭付きの家を構え、息子や孫に囲まれ幸せな老後を送ることが出来ているのも、サッチーの何十年もの経済的戦略があってのことなんですよね。

そして2017年12月8日、野村沙知代さんは、85年という波乱の生涯に幕を閉じられました。

サッチーの全方向への攻撃性は、小熊を守る野生の母熊のそれだったのかもしれませんが。

現代よりももっと女性蔑視が激しい、昭和~平成の時代をパワフルに生き抜き、ノムさんのため、家族のために世間を敵に回して暴れ回った稀代の女性タレント、そして実業家でもあった、野村沙知代さんへの敬意を表しつつ、この記事をしめくくりたいと思います。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

はにまる

 

おまけ

↓ノムさんに「あいつは何も考えとらん!感覚だけで野球をやっとる!」と、ネチネチ嫌味をいわれつづけた、今岡誠さんが現役引退後に出版したアンサーブック「感じるままに生きてきて

 

はにとらちゃん
はにとらちゃん
えっ、ほんとに何も考えてなかったの??

ノムお爺ちゃんたら、いまだに関西圏ではマコっちゃんを講演のネタにして嫌味言ってるそうですけど…

そうはいっても、今岡誠さんのほうも、講演でちょろちょろノムさんをネタにして笑いを取っているらしいので…

ま、お互い飯のタネってことでWin-Winとして丸く収めていただけますよう、よろしくお願いいたします。