はにまる日記

大腸ガン闘病を公表した阪神タイガース・原口文仁選手に、「頑張って」と言えない理由

大腸ガン闘病を公表した阪神タイガース・原口文仁選手に、「頑張って」と言えない理由

こんにちは。

はにまる(@yamakatsuhogo)です。

お読みいただいてありがとうございます。

とても辛い話題ですが。

阪神タイガースの原口文仁選手が、Twitterで大腸がん闘病中であることを発表しました。

まだ26歳。

そしてプロ野球選手として今年が飛躍の正念場であることを、ご本人もファンも、誰もが知っている、春季キャンプ直前のこのタイミングでのニュースです。

病名を伏せることも出来たはずですが、原口選手は自らの判断で、すべてオープンに公表する道を選んだのでしょう。

昨年シーズン、代打最多安打記録と並ぶ活躍をした選手が、春季キャンプにも参加せず、その理由を公表しないままでは、ファンの中でいろいろな憶測を呼ぶことや、それがかえって球団に迷惑をかけることになる、と判断したのかも知れません。

でも本来であれば、個人の病歴なんて、なにはさておき、第一の”プライバシー事項”であるはず。

横田慎太郎くんも脳腫瘍で長期療養していましたが、なにも球団から発表がないことに”業を煮やして”、「横田はどうしているんだ」と、球団に電話で問い合わせたというファンの方の呟きを見つけたこともあります。

「公表されていないけれど~」と訳知り顔で、”行方不明の横田くん”について、いい加減なコメントしていた人もいました。

人気球団の選手だからとは言え、(たとえ病名を公表しなくても)、色々と詮索を受け、横田くんのご家族も大変なご苦労をされたことと思います。

そして今回。

原口文仁選手が、自らのガンをインターネット上で自ら公表したことで。

阪神ファンの私たちも、とても大きなショックを受けました。

twitterで思わず呟きましたけど、本当に言葉になりませんでした。

腰に大きな故障を抱え、3年も育成選手として苦しい時代を送り、やっとチャンスを掴んで支配下へ復帰。

そして2018年シーズンからは、自ら退路を断って、捕手への再転向…。

何度クビになってもおかしくない、本当に綱渡りのプロ野球人生を積み重ねてきての、10年目のシーズン。

やっとこれから、本格的に飛躍できるかどうかという勝負の年。

これまでの原口くんより”頑張っている”人が世の中にどれくらいいるでしょうか?

その原口くんが病気になったからといって、原口くんの100億分の一も努力してこなかった私が、「頑張って!」とは、とても声を掛けられなくて。

なんと言って良いかもわからなくなってしまいました。

しかしながら、ネット上では原口くんへの励ましの声が、あっと言う間に何百、何千ものメッセージとなって流れていきます。

原口くんの人となりを直に知るスポーツ紙の記者さんたち、ライターさんたちが綴る記事はよりエモーショナルです。

阪神ファン、野球ファンたちの方も、自分たちの不安をかき消すように。

原口くんへのポジティブな応援の言葉が連なり、頑張れ、頑張れの大合唱のなかにあって。

その中に溶け込めないでいる私が。

ただ原口くんに元気になって欲しいだけなのに、まるで自分はひねくれ者なのだろうかという気持ちになってしまい、その事を考えるだけで落ち込んでしまいました。

その理由が自分ではすぐわからなかったのですが、ほんの2ヶ月前に読んでいた本の影響だということに、一夜明けて気がつきました。

幡野広志さんの「ぼくが子どものころ、ほしかった親になる」です。

1983年生まれの写真家で、多発性骨髄腫というガンを患い、すでに余命宣告を受けておられる幡野さんは、お子さんと過ごす時間、写真家として過ごす時間、一人の人間として過ごす時間の大切さを、ご著書のなかでとても率直に綴っておられます。

幡野さんはガン患者であることをオープンにしながら、フリーランスの写真家として活動しておられる方ですが。

途中、あまりにも多くの”精神的なダメージ”を受けて、フリーランスにとっての”営業の命綱”とも言うべき、携帯電話の番号を変える羽目になります。

それは、「善意」という名の”宗教勧誘”であったり、”民間療法”であったり、”サプリ”や”新しい治療法”、”気功”、”ヒーリング”など、ありとあらゆる「貴方を救いたいという優しい手」の形をしたモノのせいでした。

どうやって番号を調べたのか、スピリチュアル療法や代替医療をはじめ、パワースポットや宗教の勧誘の電話が来るようになった。

ウェブの世界は、極端から極端に針がふれることがある。

善意のアドバイスを無視すれば途端に生意気な患者となり、悪者になってしまう。僕が死んだ後に妻と息子が「○○をやっていれば、助かったかもしれないのに」と、言葉の暴力をぶつけられる可能性もあるだろう。

引用:「ぼくが子どものころ、ほしかった親になる」P.27

幡野さんは、こういう一方的な善意を「優しい虐待」と表現しておられます。

誰もが、身近な人、応援している存在を失ったり、苦しませたりしたくない。

だからこそ、我がことのように辛くなり、その自分のなかに生まれたモヤモヤを解消するために、患者さんに自分の頭で考え出した「正解」を押しつけていることに、気づくことが出来ないのかも知れません。

私たちは自分の中の不安を消し去りたい為に、実際に病気と闘っている人に、暗に「(私の不安な気持ちを解消するために)今すぐ回復してほしい」という、メッセージを送ってしまいがちです。

それは、言い方を変えれば「もっと努力してほしい」とか「もっと頑張ってほしい」というプレッシャーとなって、患者さんを苦しめてしまう可能性すらあります。

そもそも○○さんもガンから生還したから、貴方も大丈夫!という励ましも、全くなんの根拠もない話であって。イチローが日米通算4,000本安打を打ったから、貴方も打てるよ!って言ってるのと、何も変わらないですよね。

ご紹介した本の著者である幡野さんは、以下のようにご自分の境遇を綴っておられます。

人生はどうなるか分からない。一寸先が闇かも知れないし、その闇の一寸先が光かもしれない。ガンになったことが不幸かと聞かれれば、僕は不幸だとは思っていない。

不幸だと決めつけられて、息子のことを引き合いに出されて、哀れみの目で見られることがなによりも悔しく、悲しい。そして嫌な人ほど、不幸だと決めつけて哀れみの目で見ようとしてくる。

引用:「ぼくが子どものころ、ほしかった親になる」P.205

死の側に立って、生を見つめている人の言葉の厳しさ。

幡野さんが自分の人生を生きておられるように。

私にはわたしの。

原口くんには原口君の人生があって。

この世界には無数の、ひとの数と同じだけの人生が転がっている。

だからこそ、原口くんのために悲しがったり嘆いたり、むやみやたらと大丈夫信じてる絶対に帰ってきて野球の神様etc…と、(自分の気持ちを撫でつける為だけに)あえて言葉にすることは、今はやめようと思います。

そうは言っても。

私も幡野さんの本を読んでいなければ、原口くんの為に近所の神社のお守りを買い占めて球団事務所に送りつけたり、twitterのダイレクトメッセージで○○のサプリが良いと聞きました!とか、酵素ジュースで自然の免疫力が~!などと、迷惑ファン丸出しで暴走していたかも知れません。

本当にそもそも論ですけれど。

○○選手は大丈夫だったから~とか、初期なら○○だから~とか、医療従事者でもない私が色々しらべたところで、何もお役に立てることもないわけです。

お守りを買って送ったり、千羽鶴を折ったりするよりも。

たとえ善意からであっても、コレがいいアレがいいと、医療方針に関するお節介なメッセージを送ったりするよりも。

もっと力強いパワーを、原口くんは大事なご家族やチームメイトたちから受け取っているはずですから。

私たちに出来ることは、ただ待つことしかありません。

だからこそ、原口くんには焦らず治療に専念してほしいと思います。

復帰した後は、(こんな時のためにいる)山田勝彦さんをはじめ、信頼できる首脳陣やチームスタッフ、そして迎えてくれる仲間たちがいるんですから。

ご自身の気持ちをしっかり持って、そして”帝京魂”を信じて、原口くんがこの試練に打ち勝つことを祈っています。

最後までお読みいただきありがとうございました。

はにまる