はにまる日記

【BLOG再録】プロ野球むかしばなし「しょうじき村のすんすけ」

※この記事は、2014/03/11付のわたしの旧ブログ「帰ってきた!山田勝彦保護指定区域」からの再録となります

!閲覧注意!

真に受けちゃダメポーズの山田勝彦さん。

この物語はフィクションです。

実在する同名の人物・球団関係者とはなんの面識もない、一個人の妄想によるメンタルセルフケア活動の一環ですので、この架空記事に何かとくべつな意味を見出さないでください。

※2014年当時のわたしの心象によって創作されたものになりますことをご理解ください。

プロ野球むかしばなし「しょうじき村のすんすけ」

 

むかし、むかし。

あるところに、しょうじき村のすんすけという若者がすんでおった。

すんすけは、とにかく野球のすきな若者だった。しょうじき村の野球チームは、いつもすんすけが打ってまもって、大活躍。とおく都からも、すんすけの活躍をみにくる人がおったほどだった。

いつしか、すんすけは都にいってプロ野球選手になりたいと願うようになっておった。そのすんすけの夢を、バカなことをと笑う者もおったし、応援してくれる者もおった。

ただ、すんすけはプロ野球選手になりたくて、なりたくて、いっしょうけんめい、ひたすら練習をしておったのだ。

ある日、都からいくつかの球団がすんすけをスカウトしようとやってきた。でもすんすけは、あまりに正直だったので、大学とひとつの約束をしてしまっていた。

ドラフト3番めまでによばれなければ、すんすけを招きたいと言ってくれた、大きい会社へ行くことになっていたのだ。

すんすけは、ただ祈った。プロ野球選手になるのは、すんすけのただ一つの願いだ。

お願いだ、お願いだ。

野球のかみさま、もし俺をプロ野球選手にしてくれるなら、これからどんなに辛いめにあってもかまいません。

あまりにも正直なすんすけは、ただただそう心から祈った。

ああ!しかし、すんすけの名前はどこの球団のドラフト3番めまでには呼ばれなかった。

すんすけは泣いた。泣いた。

でも仕方がなかった。

すんすけは泣きながら、約束どおり大学のすすめてくれた会社へ行くことになった。

そのときだ。

阪神タイガースというチームが、急にすんすけを欲しいといい出した。このチーム、人気とお金はあるんだが、いかんせんフロントに知恵者がすくない。すんすけの大学が 伝えていた事情などすっかりわすれて、すんすけに声をかけたのだ。

すんすけも、すんすけの大学も、大きな会社もびっくりぎょうてん。もう約束してしまっているのに、とつぜんのことにもう皆右往左往。

プロ野球選手にはもちろんなりたい、しかし約束はやくそく。すんすけの気持ちだけではどうにもならない。

すんすけは、とにかく嘘をついたりだましたりするのが大嫌いなしょうじき村の若者だから、なやんでなやんで、とうとう5キロもやせてしまった。

その日の夜、泣きながら眠ってしまったすんすけの耳に、遠くから声がきこえてきた。

「すんすけ、すんすけ。お前はドラフトの日、どんなに辛いめにあっても構わないと祈ったな。いまもその気持ちにかわりはないか」

すんすけは夢の中で答えた。

「ありません、俺はプロ野球選手になりたいのです」

はっと目を覚ますと、すんすけは同期に遅れてタテジマに身を包み、入団会見の場に座っておった。

そして、背中には7番という番号がついていた。すんすけはまだ夢の中にいるようだった。

すんすけには、ふじかわという名字があったけれど、そのときのチームには同じ名前のスターがいたので、すんすけは名字では呼ばれなかった。すこしさみしい気持ちはあったが、チームのためになるならと、すんすけは気にしないことにした。

それからのすんすけは、とにかく人よりもたくさん練習した。もともと打って守っての素質にはめぐまれているすんすけだ。

試合によばれれば、きちんと結果をだしてアピールをした。

「すんすけは、いいね」

「すんすけをもっと使いたいね」

ファンからもそんな声がではじめた。でも、何年たってもすんすけはレギュラーになれなかった。

わだ監督は、いつもやまとばかりをスタメンに入れ、すんすけは試合の最後にほんの少し使われるかどうかだった。

入団したときに貰った背番号の7も、アメリカ旅行からもどってきたスター選手にあっさり取られてしまった。

もうチームは、すんすけのことを大事にしてくれないのかもしれない。そんな不安に押しつぶされそうになりながらも、それでもすんすけは、諦めずひとりバットを振った。

いつか、いつかその思いだけがすんすけを支えていたのだ。

そんなある日、わだ監督が急にすんすけを呼んでこう言った。

「やまとが骨折をしてしまった。明日からお前に試合にでてもらうぞ」

すんすけには大チャンスだ。すんすけは打って、打って、打ちまくった。守りだって負けていない。足だってはやい。

ファンはたいそう喜んだ。

すんすけが活躍すればするほど、ファンも悩んだ。すんすけとやまと、どちらもタイガースの未来をになう若者だったから、どちらともきめられなかった。

しかし、やまとの骨折が癒えると、わだ監督はやまとばかりをスタメンにして、すんすけは試合によばれなくなっていた。

ファンはすんすけを哀れんで、りっぱな応援歌をつくってくれたが、その歌もなかなか試合で流れることはなかった。

ただ、すんすけは練習した。ほかに何もできなかったのもあるし、いつでも野球を出来るようにしておきたかった。

何よりも、すんすけは野球がすきだった。

しかしある夜、ついにすんすけは泣いた。

泣いた。哀しくて悔しくて、そして泣きながら眠ってしまったのだ。

遠くから、いつか聞いた声がした。

「すんすけ、わたしは野球の神様です。お前はあのとき、どんな辛いことにも耐えると誓いましたね。ただ、いまのお前の使われ方では、お前にあたえた才能がもったいない」

声はやさしく、すんすけを包んでいた。

「さいわい、プロ野球のチームはまだ他に11もある。わたしがお前にふさわしいチームを探してあげよう。そこで、お前は球界を代表する選手になるがよい」

すんすけは、はっと顔をあげた。あたりは真っ暗で何もみえはしなかったが、すんすけは自分でもおどろくほど大きな声で答えた。

「いいえ、いいえ。かみさま、俺はタイガースに残りたい。このチームはたとえ勘違いでも、俺をプロ野球選手にしてくれました。俺は、まだその恩を返していません。だから、よそには行きたくありません」

野球の神様はあきれて言った。

「なんと愚かな。このままでは、ずっと便利屋でおわってしまうかもしれないのですよ。すんすけ、お前はまだ若い。もう少しかんがえてみよ」

しかし、すんすけはやはり、しょうじき村の若者だった。大きなよく通る声で、神様にお答えした。

「神様、俺はどんなに辛くてもタイガースできっとレギュラーになります。そしてチームの優勝にこうけんしたいのです」

姿のみえない神様は、すんすけの正直さに呆れもしたが、すんすけの心ばえを好ましいとも思った。

「そこまでお前が言うならば仕方がない。きっと今よりも苦しい辛い思いをするだろう。だがお前はさいごまで自分に正直に生きることができるはずだ。それがお前のえらんだ道なのだから」

野球の神様の声が響くと、ぱっと稲光のような明るさに包まれて、気がつくとすんすけは、甲子園の1塁側ベンチにすわっておった。

試合はもうはじまっていて、スコアボードの横には、いつもどおりやまとの名前が掲げられてある。

それでもタテジマに身を包んだすんすけは、何だかうれしいような、申しわけないような、ふしぎな気持ちになった。

わだ監督が、イライラしながら近寄ってきて、すんすけに出番を告げた。チームはまた負けていて、どうにも勝てそうにないようだった。

「よし!」と代打のすんすけは、ビュンビュンと素振りをした。

バッターボックスにたつと、遠くライトスタンドから、すんすけの新しい応援歌がきこえてくる。

「すんすけ!がんばれ」

「すんすけ!打ってくれ」

たくさんのファンの声援が、すんすけを包んでいた。ようし、やるぞ!と、すんすけはマウンドの投手をにらみつけた。

………

それからのすんすけがどうなったのか、それはまた、来シーズンからのおたのしみ。

(おしまい)